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泣く夢は今まで何回か見たが、
彼女はその朝初めて泣いた
夢のあとに。

決して悲しむことではない
切なくもないむしろ美つくしい
うつくしすぎで
心の最も深いところまで
音なく静かに沈んでしまい
目覚めた途端にスーと消える
ゆめ。

跡は
そのまま 空き穴として残され

ぽっかりと。


「彼女は 失望と悲しみは味わったとしても、まだむなしさを知らないのだ。」p98
鮮やかな朝日の光が彼女の涙をダイアモンドのように照らすあの朝までは。

ただひと言が為。
それがすべての報いになるから。






『伝わってるよ。』と。





虹のような七色の涙を見た彼女が
それを儚さだと知るのは
ほんの少しあとのことだった。
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